江國香織「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」レビュー

江國香織さんといえば、恋愛小説などの作品が多いことで知られる有名作家さんです。

江國香織さんの作品は、どれも綺麗でファンタジーのような世界観で、そしてどこまでも愛に一途な登場人物たちがせつなくて、好きです。

特に言葉の選び方が、強烈でいて、意外な方向からやってくるような感じなんだけど、でもスーッと自然に入ってくるのがほんとに不思議。

そして自然なんだけど、ものすごい密度の濃い感情がそこには込められていて、私はいつも感情移入して切なくなってしまいます。

そんな江國作品の中から、

短編集「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

という作品についてレビューを書いてみます。

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どんな短編集?

この短編集は、作者の江國さんが海外旅行をしていた際に見かけた

It’s not safe or suitable to swim.

という立看板からインスピレーションを得て出来た作品とのことです。

「遊泳禁止」

とかじゃなく、

「泳ぐのに安全でも適切でもありません」

なんて不思議な立看板ですね。

「ダメ~!」と大きく手でバッテンつけられるみたいなのではなくて、

静かに丁寧に諭される、みたいな看板。

そこには「絶対ダメ~!早く立ち去りなさーい!」っていう感じではなく、

「ここで泳ぐのは安全でも適切でもありませんがそれでも大丈夫ですか?」って聞かれてるくらいの感じすらします。

この短編集の主人公たちは、

安全でも適切でもない人生のなかで、

愛にだけは躊躇わない

そんな世界に踏み込んでしまった人たちです。

看板と同名の「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」という作品のなかで、

It’s not safe or suitable to swim.

中略

泳ぐのに、安全でも適切でもありません。

私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか。

とこの看板について書かれています。

みんなそれぞれの人生のなかで、

愛ゆえに、

安全でも適切でもない世界に踏み込んでしまったけど、

それでも大丈夫?後悔はない?

そんな風に、優しく静かに注意を促してくれるような、そんな存在なのかなと思います。

この作品の好きなところ

江國さんの作品にはたくさんの食べ物や飲み物が出てきます。

その表現がまた、今にも美味しそうな匂いがただよってきそうな、

すごくリアルな感じなのですよね。

おんなじもの、私も食べてみたい!と憧れてしまうくらい、

文字なのに、とっても美味しそうに伝わってきます。

そして、江國作品で食べ物や飲み物と同時にその延長線上につながっているのが

愛を交わすということ。

この短編集の「うんとお腹をすかせてきてね」という作品では、

あたしたちは身体全部を使って食事をする。おなじもので身体をつくり、それをたしかめるみたいにときどき互いの身体に触れる。

こんなふうに、食べることと愛を交わすことがつながっているんですよね。

牡牛座の金星をもつ、江國さんならではの愛なんだろうなぁっていつも思います。

江國さんのホロスコープをみると、牡牛座の金星は、支配星回帰といって、そもそも強い配置です。

そこに天王星、冥王星、海王星とトランスサタニアンというとても影響の大きい天体すべてと関わっています。

金星は、

普段着ではなくよそいきの服、

普段のご飯ではなく手の込んだごちそうや外食、

そんな楽しみや美しさ、それから女性としての自分(女性の場合は恋愛)を表す天体です。

また牡牛座は、五感で感じる感覚がとても敏感で、それで物事を判断するようなところもあるので、

食べること、香り、音楽、マッサージ、キレイな景色、自然

が好きな人が多いのではないでしょうか。

私も月が牡牛座なのですが、私はどちらかというと普段の飾らない自分が牡牛座なので、なんなら恋愛に関してはドライな水瓶座なので 笑

江國さんのような、

食べることと愛を交わすことが密接にかかわり合って存在するというのは

この牡牛座の金星ならではで、

素敵だなぁといつも憧れてしまいます。

この「うんとお腹をすかせてきてね」は、そんな江國さんの独特な世界観が味わえる物語のひとつかなぁと思います。

私が一番好きだなと思ったのが、「サマーブランケット」という話。

13年もの長い間、心から愛した男性は妻のもとに戻り、

両親を亡くし、精神的な病を患い、

両親の遺産とゴールデンレトリバーのマリウスとともに、

海辺に家を買って住み始めた道子が主人公です。

海辺の家に、何もしなくてもどんどん砂が入ってきてしまうように、

ただ、その場にじっと耐えているしかない毎日。

近所の大学生カップルとの交流をきっかけに、

余計に自分のそんな状況を思い知らされます。

でも、「サマーブランケット」をきっかけに、

もしかしたら、道子は、心の奥に追いやっていた

甘くてせつない感情の存在を思い出したのではないのかな?

なんて思うのです。

これからも続く毎日は変わりません。

マリウスが死んだら、私を地上につなぎとめるものは何もなくなる。

そんなふうに思っていた道子だけど、

でも、心の奥の甘くてせつない感情は、

現在の自分にとっては逆に現実をつきつけられるような

つらい気持ちになるものかもしれないけれど、

それでも、道子を地上につなぎとめるきっかけになるものなのではないのかな、

なんて思ったりもしたのです。

まだ、はっきりとした輪郭は見えないけれど、

でも、まだそこにある。なくなってなかった。

それに気がついたことが、ものすごく重要なことなのではないかな、なんて思うのです。

そんな、道子の「再生」の物語にも思える「サマーブランケット」

人によっては、全く逆の、せつない気持ちしか残らないかもしれません。

でも、私は、なんかそこに、かすかな一片の光を見出してしまった。

そのちいさなちいさな光が、最後に見えるような気がする、

だから私は、この作品が好きなのです。

ご紹介した3つの話のほかに、7つ、全部で10の短い物語が収録されています。

短編集なので、短い時間でも、少しづつ読みすすめられるのではないでしょうか。

江國香織「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」のレビューでした。

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